今回もマイナス金利とマイホーム購入の基礎知識についてお伝えします。
マイナス金利の今はまさに長期大型ローンを組むのにもってこいのタイミングという事をお伝えしました。
今回は『それでも固定期間選択型商品にしますか?』というお話しです。
固定期間選択型商品はある一定期間は金利が物凄く低い商品で、何も分からなければお得なローン商品だと思って申し込みをしてしまうと思います。
ただ、住宅ローンというのは長期間返済していく商品になりますので、長期的な視点でお得かどうかを見ていく必要があるんですね。
そこで今回はマイナス金利である今の時期に本当に固定期間選択型商品が良いのかどうなのかを解説していきたいと思います。
私共は住宅ローン専門の事務所です。
最近はマイホームを購入されたばかりの方々から、住宅ローン控除についての質問を受ける事が多くなってきました。
相談に来られるお客様の多くが地元の銀行から3年固定金利の住宅ローンを借りているんですね。
ローン控除手続きのご説明が終わり、親しくなった後の雑談で、FP事務所として今後の参考のために教えて欲しいのですがと言いながら、下記の2つの事を聞くようにしています。
- どうしてその金融機関を選んだのか?
- どうして3年固定を選んだのか?
お客様とお話しして分かるのは、ほとんどのお客様は営業担当者に勧められたまま銀行を選び、ほとんど選択の余地がないまま3年固定の住宅ローンを選択しているという事です。
固定金利期間選択型のローンの仕組みについて
そこでそんなお客様達に私はこんな話しをします。
うちはFP事務所なので、サービスで少しだけローン金利の仕組みについてお話ししますね。
お客様が選んだのは固定金利期間選択型のローンで、その名の通り固定金利の期間を選べる商品ですが、お客様が選んだのはその固定金利が1番短い3年型なんですね。
これは金利が1番安いのですが、固定金利の期間も1番短いんですね。
この商品、最初の固定金利の期間である3年間はキャンペーンで金利が低くなっている分、3年過ぎるとキャンペーンが終わるので、たとえその時の基準金利が上がっていなくても、実際には金利が上がって支払いが増えるのはご存知ですよね?
はい、何となく聞いていますが、本当のところどうなっているかよく分かりません。
3年固定の住宅ローンの金利の仕組みについて
では、3年固定の住宅ローンの金利の仕組みについて詳しく説明してみますね。
今の3年固定金利は基準が2.7%、ですから本来は2.7%なのですが、今は銀行の金利引き下げ競争が盛んです。
その影響で当初3年間はキャンペーン金地で、ここからマイナス1.9%となっています。
北海道の主要銀行の住宅ローンは、このキャンペーン金利マイナス1.9%は3年間だけで終わりです。
3年過ぎると、それ以降はマイナス1.5%になる特約を用いています。
具体的に金利を見ていくと、最初の3年間は基準金利2.7%-1.9%で0.8%です。
3年過ぎると、マイナス1.9%がマイナス1.5%になりますから、基準金利が今のままの2.7%であっても2.7%-1.5%=1.2%になり、同じ3年固定を選べば、次の3年間は1.2%が適応されます。
しかし、これはあくまでも基準金利が今と同じ水準の2.7%の場合です。
現在の水準は過去から見ても本当に低い状態でいつまで続くか分かりません。
もし、仮に金利が上がり始めたら、この基準金利2.7%が上がる事になります。
例えば、基準金利が年間に0.2%ずつ上がってしまうと、3年後の基準金利は2.7%+0.2%+0.2%+0.2%=3.3%になります。
実際の金利は、この3.3%から特約の1.5をマイナスして1.8%という事になります。
当初の0.8%と比べると1%のアップになります。
もし3,000万円の残高が残っていたら、1%アップすると返済額はどのくらいになると思いますか?
え~、分からないです。どれくらい上がるんですか?
3,000万円×1%=30万円です。
月に直すと30万円÷12ヶ月=25,000円
毎月の支払いが25,000円高くなります。随分上がってしまいますね。
え~!月25,000円ですか、そうなったら大変・・・。でも金利は急に上がるのでしょうか?
金利は世界と日本の金融情勢次第で変動する!
金利が上がるか下がるかは、世界と日本の金融情勢次第なんですね。
ここ20年金利は上がっていませんので、誰もが金利が上がるイメージを想像できずに、何となく大丈夫と思っている節があります。
しかし、低迷していた株価がアベノミクスによって急騰したように、金利がこのまま続くという保証は全くありません。
東京オリンピックが景気の起爆剤になり、日本はデフレを克服し、景気低迷から脱却し、景気が回復すれば、当然金利も上がります。
過去の例を見ても、金利は下がる時はゆっくりですが、金利が上がり始めると急激に上がります。
実際にバブルの頃には、1年間で1%以上金利が上がった事がありました。
年間0.2%の上昇が3年間続けば0.6%で、これは十分可能性があります。
月々の返済がある日突然25,000円以上増えるというのは、あり得ない話ではないんですね。
そして、3年固定ローンの怖いところは、固定期間の3年間、金利が固定されているため借りた人は金利が上がる事を忘れてしまうという事です。
これが変動金利なら6ヶ月ごとに金利変更の案内が来るので、金利が上がり始めた事に気付きます。
しかし、3年固定は良くも悪くも3年間は金利が上がらないので、なかなか変わった事に気付かないんですね。
そして、3年経った時いきなり金利の上がった新しい返済額の通知が来て、ビックリした時には後の祭りです。
返済がいきなり25,000円増えてしまう可能性があるんですね。
え~、それは困ります。私達はどうすれば良いのですか?
金利の動向を常に気にする!
金利の動向は、常に気にする必要があるんですね。
このマイナス金利は、ここしばらくは続くと思われますので、すぐに金利が上がる事は考えにくいです。
しかし、そもそもマイナス金利は景気を良くするための政策です。
マイナス金利の効果が出れば、景気が良くなり、景気が良くなれば、金利は上がります。
そして、金利が上がれば、返済額は増える事になります。
3年固定金利の住宅ローンを借りてしまった方の対処法は?
今は本当に金利が低い状況です。
そんな状況では、住宅ローンを選ぶ時にちょっとだけ金利が高くても、最初から10年・20年といった固定期間が長い形のものか、出来れば全期間固定金利の商品を選べば良かったんですね。
ただ、お金を貸す立場から言うと、この低い金利の時代に長期固定金利でお金を貸し出すと、もし今後金利が上がった場合借りた人からもらう金利よりも預金した人に払う金利の方が多くなってしまいます。
つまり、仕入れ値が売値を上回って赤字になってしまうんですね。
そうならないようになるべく変動金利に近い3年固定金利を売る事で、今後の金利上昇のリスクをお客様に持ってもらうというわけです。
だから本当は2.7%のはずの金利を0.8%にして目先の安さを強調し、さらに『8大疾病生命保険付き』などの金利に関係ない部分を売り物にする事で、お客様の目を1番大事な金利の問題から逸らす作戦を取っている、私はそんな風に感じています。
3年固定金利を借りてしまった方の対処法としては、金利が上がり切る前に全期間固定金利の商品に『借り換え』するという方法がありますが、借り換えは最初に借りてから1年経過しないとできません。
今借りたばかりの方の次の借り換えのタイミングは、借りてから1年経った後か次の固定金利の見直しが来る3年後です。
その時はお役に立てると思いますが、今の話を心に刻んで頂いて、3年後にまた思い出したら当事務所まで相談に来て下さいね。
ここにポスターが貼ってあるフラット35だったら、ずっと金利は変わらなかったんですか?
そうなんです、フラット35は文字通り35年間金利が変わらないローンです。
最初からご縁があったら、フラット35をオススメできたのに残念です。
我々ももっと宣伝しなければいけないですね。
私の話、少しはお役に立ちましたか?
ありがとうございます、本当に勉強になりました。ローンを組む前に教えてもらっていたら、もっと良かったのですが・・・。
金利が上がるリスクの事を知らない!
何千万円という大きなお金を借りる時、お金持ちは非常に金利を気にします。
それは金利が上がれば、返済が大変になる事を経験上知っているからです。
でも、住宅ローンを組むお客様は一生に1度の事なのに、金利が上がるリスクの怖さを知りません。
サブプライムローンもそうですが、『後から考えれば、破綻して当たり前』のローンでも世間が大丈夫という根拠のない判断をすれば、誰も疑わずお金を貸してしまいます。
最後に困るのは、借りた人です。
住宅ローンにおいて変動金利が良いか、固定金利が良いかを判断するのは自己責任です。
しかし、大きなお金を借りるのだから、リスクについてはきちんと勉強した方が良いです。
そして、3年固定金利を選ぶという事はこれから金利が上がった時には返済額が増えるけれど、それでも今は安い方が良いという選択をするという事なんですね。
金利が底を付いているから伝えなければならない事があります。
お客様が本当に必要とする情報をきちんと伝える事が信頼作りの近道です。
それに関わるには、やっぱり様々な知識を持っていた方が良いです。
今回の話は、ちょっと辛口だったかもしれませんが、読んで頂いた皆様に何か伝われば良いなと思っております。
どの住宅ローンでも当然リスクはある!
どの住宅ローンにも一長一短があります。
しかし、どの住宅ローンを選んだにしてもリスクを知らないままで契約してしまう事くらい危険な事はありません。
住宅営業マンが全て正しいわけではありません。
全て言いなりで契約してしまっても、最後は全て自己責任です。
その中で最も合う住宅ローンを選びましょう!